オフィスチェアの座面裏側には、以下のようなシールがある。

国内の有名メーカーのオフィスチェアにはどれも同じ「JOIFA標準試用期間 8年」という表示がある。
上記はオカムラ「バロン」のラベルだが、製造年2017年の下に「JOIFA標準使用期間 8年」とある。製造から8年後の2025年には、どうなってしまうのか。
この「JOIFA標準試用期間 8年」とは何なのかについて徹底的に深堀りしてみたい。
JOIFAは業界団体
JOIFAとは、日本オフィス家具協会のことで、いわゆる業界団体。オフィス家具産業の健全な発展を図る目的の組織だ。
会員企業には、オカムラ、イトーキ、コクヨ、内田洋行をはじめとしたオフィス家具関連企業が名前を連ねている。
ただし、オフィスチェアをけっこう売ってるニトリの名前はなかった。
また、スチールケースやハーマンミラーといった海外有名企業の名前は見当たらない。
JOIFA標準使用期間とは
一言でいえば、JOIFA標準使用期間とは、事故防止を図るために設定された目安だ。
回転椅子は8年、非回転椅子は8年、机は10年、などと家具について定めている。
オフィスチェア(回転椅子)について言えば、製造から8年間は重大事故が発生する恐れはない、という目安。ただし、一日8時間程度使用など、あれこれ条件もつく。
製造から8年以内だからといって絶対安全なわけではなく、事故があっても保障してくれるわけでもない。また耐用年数ではないので、この期限を超えたからといって使えないわけではない。
経年劣化の「注意喚起」と考えたい。
品質の多様性を無視したテキトーな基準
一口に回転椅子といっても、製品の品質水準は千差万別だ。
オフィスチェアの中には、定価1万円以下の輸入格安チェアから、定価20万円を超える有名ブランド高級機種まである。
「天と地と」くらいに品質差があるはずだ。
それをまとめて「JOIFA標準使用期間 8年」と言ってるところは、いかにもテキトーな感じがする。
定価10万円20万円の高級チェアにたいして「8年」という数字はピント外れだ。定価1万円程度の安物チェアにとっては妥当かもしれないが、一緒にしないでほしい。
高級チェアの利用者からみると、ずいぶんテキトーな基準に見える。
古すぎるチェアの流通は抑えたい
じゃあ高級チェアにとって、「JOIFA標準使用期間」は無用なものかというと、そうとも言い切れない。
やはり何らかの基準がないと、40年50年前の高級チェアが流通しまくって、事故が多発しかねない。
「オフィスチェアは危険だ」と消費者に思われたら、業界は干上がってしまう。
重大事故を防止するためには、あまりにも古いチェアの流通は抑制したい。そこで、「製造から一定期間が過ぎたら、買い替えを考えてね」という注意喚起はあってしかるべきだろう。
高級チェアは20年
定価1万円の格安チェアでさえ「JOIFA標準使用期間 8年」であることを考えると、当サイトで紹介しているような有名ブランドの高級チェアは、最低20年は使えるはず。
くれぐれも「JOIFA標準使用期間」は耐用年数ではないことを忘れないようにしたい。
高級チェアにたいして、「製造から8年たった。そろそろやばいかな」なんて考える必要はない。使用期間がたった8年ぽっちで不安になるような安物ではないのだ。
ただし、使い方によって経年劣化の進行度は変わってくるので、当サイト提唱の「高級チェアは20年」は、あくまで目安と考えていただきたい。
ともかく、「安物チェアは8年、高級チェアは20年」というのが当サイトの主張。(高級チェアとは、有名上場企業が製造した定価10万以上のオフィスチェア)
賞味期限と同じで、やさしくない
ところで、「JOIFA標準使用期間 8年」という基準が普及することで、何が起きるだろうか。
おそらく、「なんとなく8年以上古くなったオフィスチェアは怖い」というイメージが広まって、新品がよく売れるはずだ。
業界の狙い通りというべきだろうか。
悪名高き「賞味期限」と同じで、必要以上に「買い替え」「廃棄」を加速させてしまう。
地球環境にはまったくやさしくない。消費者の財布にもやさしくない。
安全のためにはしょうがないが、高級チェアまで廃棄スピードが上がってしまうのはいかがなものだろうか。
中古チェアは安くなると予想
多くの人は、「JOIFA標準使用期間 8年」を消費期限のように感じて、古いチェアを避けるようになるだろう。
企業は10年程度で高級チェアを買い替えるようになり、中古市場に大量の高級チェアが出回るようになる。
一方で、製造から10年以上たっている高級チェアの中古は売れなくなる。
結果として、中古チェアの価格はどんどん下がっていく。
将来的には、びっくりするような価格で高級チェアの中古が買えるようになるかも知れない。願ったり叶ったり。JOIFAのおかげである。